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last updated 1997/06/08

第24話(全130話)

マリイアの物語




4 マリイアの物語

 そこはテオ
 もうひとつの地球
 
 そこには深い森に囲まれた泉がありました。
 泉の水は鏡のように平らで、周りの風景を逆さまにして映し出しています。       
 時折、蝶のような羽根と、赤ちゃんのようにか弱い手足を持った生き物が、ここへ水を飲み
にやってきます。それは妖精のようにも見えますが、それはわたしたち地球人から見ればそう
見える、というだけのことで、本当は妖精ではありませんでした。
 テオではそのちいさな生き物に「ウィンガ」という名前をつけています。
 ウィンガは地球のおとぎ話にでてくる妖精と、姿形がそっくりでした。弱々しくオドオドし
ているところも良く似ています。けれど彼らはおとぎ話のように不思議な力は宿したりしてい
ませんでした。
 妖精のように花の密を飲んで、人の心を読み、過去や未来を見通したりはしません。
 ウィンガは森でいちばん大きくて獰猛なドラテロの体に生える苔を食べています。
 そしてドラテロの真ん丸で濃い緑色をしたフンの中に巣を作っています。
 とてもちいさな弱々しい生き物なので、いつも大勢の仲間と一緒に行動します。
 ウィンガはそういう生き物です。
 森の泉はウィンガたちが水を飲みにくると、いつも蜜よりも甘い水で彼らを潤してあげてい
ました。
 この森にはエルモの木がたくさん生えていて、その木から甘い樹液が泉へと流れ込んでくる
から、泉の水はとても甘い味になりました。
 けれど、どんなに甘いからといって、それをみなさんが飲んでみたりしてはいけませんよ。
 みなさんのパパなら、もしかしたら大喜びするかもしれませんが、エルモの樹液は、私達の
世界でいえばちょうどワインとそっくりなんです。
 ね? 
 どんなにおいしそうに見えてもみなさんがワインを飲んだりしたら、パパやママから大目玉
をくらってしまうでしょう? それと同じです。
 エルモの木はその実からお酒みたいなガスを出す木で、だから森はいつもそのガスのせいで
ミルク色の霧に包まれたようになっています。
 もしあなたがこの森に迷い込んだなら、すぐに森の外へ出なければいけません。
 そうしないと酔っ払ってしまいます。
 子供が酔っ払うのは決していいことではありませんね。
 この森はだから子供たちが足を踏み入れてはいけない場所なんです。
 もし酔っ払ってフラフラしている所を、獰猛なドラテロにみつかったりしたら大変です。
 ドラテロはエルモの森でいちばん恐ろしい動物です。
 ライオンと水牛とワニがひとつになったような、とても恐ろしい顔をしていて、鋭い牙でみ
なさんを食べにきますよ。
 ね。だからもしこの森に迷い込んでしまったら、すぐにお逃げなさい。
 テオにはあなたたちをやさしく包んでくれる場所が、ほかに沢山あるんです。
 この森は子供たちには危険です。
 ドラテロ以外にもヘンテコな生き物がいっぱいいるんです。
 だから
 さァ、すぐに森の外へと走り出しましょう。

(つづく)




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